哺乳類の生殖生物学

・高橋迪雄(東京大学) 監修
・B5判上製本、320頁/図表多数
・ISBN4-87362-089-9 C3061
・初版発行:1999年3月31日
・定価(本体5,000円+税)/送料340 円

 生殖なくしては生物種の維持はありえない.生殖機能にわずかにでも優位性をもたらすような遺伝的変化は,時を経て種全体に拡がる.本書に示されているように,生殖現象を営む機構は,種によってある場合には微妙に,ある場合には大きく変化する.「哺乳類の生殖生物学」は,哺乳類の生殖の原理とその変異を語る学問である.
 このような学問を理解するためには,形態学,生理学はもとより,行動学,遺伝学,生化学あるいは免疫学などさまざまな切り口からアプローチが必要になる.また,分子生物学の基礎から応用までを具体的に例示することも可能である.つまり,生殖生物学はすぐれて学際的な学問ということができる.
 一方,発生工学の進歩は著しく,遺伝子機能の解析モデル,病態モデル,遺伝子改変家畜の作成などの応用技術が次々に誕生している.このような技術を真に理解するため,あるいは若い学徒にこのような技術のさらなる発展を託するためには,生殖生物学の系統的理解が欠かせない.
 内分泌撹乱物質が環境エストロジェンともいわれているように,生体機能の撹乱は生殖を司る過程に最も鋭敏に,しかも深刻にあらわれる.「哺乳類の生殖生物学」はこのような新規化学物質の安全性の評価という面からも現代的な意義を持つものである.本書は従来の伝統的な「繁殖学」の枠を踏み出して,生物学としての体系をベースに,応用科学としての実用性にも意を注いで編まれたものである.

主要目次
1 哺乳類の生殖様式
1.1 生殖戦略
1.1.1 生殖周期/1.1.2 動物行動学からみた生殖戦略/1.1.3 分子生物学からみた生殖戦略/1.1.4 情報伝達系からみた生殖戦略
1.2生殖行動
1.2.1 雌雄の性行動/1.2.2 母性行動
1.3生殖周期
1.3.1 性成熟/1.3.2 性周期/1.3.3 季節繁殖
2 生殖器官と配偶子
2.1 生殖を担う器官
2.1.1 雌性生殖器官/2.1.2 胎膜と胎盤/2.1.3 雄性生殖器官/2.1.4 乳腺/2.1.5 視床下部-下垂体系
2.2 性腺と生殖細胞の分化
2.2.1 生殖器の発生分化/2.2.2 卵子形成/2.2.3 精子形成/2.2.4 受精/2.2.5 初期胚の分化
3 生殖機能の制御系
3.1 内分泌系による調節
3.1.1 性腺刺激ホルモンの生化学/3.1.2 性腺刺激ホルモンの作用/3.1.3 ステロイドホルモンの生合成と分泌/3.1.4 ステロイドホルモンの作用/3.1.5 増殖因子/サイトカインの作用/3.1.6 ホルモンの作用機序
3.2 中枢神経系による制御
3.2.1 中枢の雌雄差/3.2.2 性腺の中枢制御/3.2.3 環境要因 3.3 妊娠過程の制御
3.3.1 着床と胎盤/3.3.2 妊娠の維持/3.3.3 胎盤の機能と胎子の発育/3.3.4 分娩
4 生殖工学
4.1 遺伝子工学
4.1.1 遺伝子のクローニング/4.1.2 発現ベクターの構築と遺伝子発現
4.2 発生工学
4.2.1 過剰排卵誘起/4.2.2 人工授精と体外受精/4.2.3 胚移植/4.2.4 核移植/4.2.5 トランスジェニック動物/4.2.6 ノックアウト動物
5 生殖機能障害
5.1 生殖毒性
5.1.1 胎子毒性/5.1.2 生殖発生毒性試験
5.2 繁殖障害
5.2.1 感染性繁殖障害/5.2.2 遺伝・機能性繁殖障害

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