獣医学臨床シリーズ 11
小動物臨床における超音波診断の有用性については認められているところである。得られる情報量は過去の他の手法による情報と常に比較される。情報の量と質の比較もあるが,その情報を得るための経費もまた判断するうえで重要である。超音波画像によって何がわかるのかの問題はまことに切実な願望である。「切らないで中をみることができる」に要約される。中がみえるがそれは生体そのものをみているわけではない。超音波という波動を利用して生体の反応をみているのであるが,幸いなことに過去の形態学的知識に似通った情報がリアルタイムに提示されるので理解が速い。尿を充満した膀胱映像は剖検によって得られる充満状態と同じものを示し,膀胱を切開して膀胱内膜をみなくても映像上は内膜をみることができる。胆嚢の触診は因難であるが,超音波では肝臓実質とともに存在位置や形態までみせてくれる。剖検なしには心臓弁膜を肉眼でみることはできないが,解剖学の通りに弁膜の動きをみることができる。これらはほんの一例であるが,病的状態となると話は違う。病名は同じでも病態は個々の症例で異なる。異なった病態をすべて網羅することは難しいが,それに向かっての集積は続けなければならない。 主要目次 |